離婚後にローンを完済した場合、登記手続上は少し面倒なことになるかもしれません。
離婚協議書
協議離婚をした場合、おそらく公正証書で離婚協議書を作成することになろうかと思います。
夫婦円満の際に購入した自宅について、夫がローンを支払うので、夫の名義になっていましたが、離婚協議の結果、夫から妻に財産分与することになったとしましょう。
金融機関の了承
この場合、所有権の名義変更(夫→妻)をするためには、債権者である金融機関の了承を得なければなりません。金融機関の手続きは時間がかかることも多く、設定時に決めた条件の変更について、必ず了承が得られるというものでもありません。
ただでさえ面倒な離婚協議に終えたのに、これから銀行とのやり取りをするのはしんどいということで、財産分与の合意が公正証書で明記されているのなら、ローンの完済後に名義変更をすればいいと考えることもあると思います。
財産分与による所有権移転登記
財産分与による所有権移転登記の原因日付は、離婚をして財産分与の協議が成立した日です。離婚前に協議を行うことはできませんので、必然的に離婚後になります。なお、裁判による財産分与の場合は、離婚後2年以内に行う必要があります。
ローン完済後に、金融機関が抵当権解除の日を定めることになりますが、これは当然、財産分与の後の日付になります。すると、ローン解除後に所有権移転登記をすればいいやと考えていたのに、登記としては、財産分与を登記原因とする場合は、所有権の移転登記を先に行わざるをえなくなってしまいます。
つまり、最初の問題(金融機関に対する名義変更)にまた戻ってくるのです。
売買又は贈与による所有権移転登記
これを解決するためには、登記原因を変更して、「売買」又は「贈与」による所有権移転登記をするしかないと思います。抵当権の解除をしてから、財産分与ではなく、ローン完済後の贈与等で、夫から妻に所有権を移転したということにするのです。
贈与契約書
ここで問題となるのは、「贈与」にするには、改めて別れた元夫と契約書を交わす必要があるということです。おまけに、贈与される元妻の側には、贈与税がかかってしまいます。
登記手続に配慮した公正証書
こうした事態を回避するためには、公正証書において、「ローンの完済後に同日付で誰々が所有権移転登記の手続をする、費用は誰々が持つ」等の文言を入れておくとよいと思いますが、なかなか登記手続の問題まで考えが及んで指摘をしてくれる公証人もいないのではないかと思われます。
仮登記による方法
なお、財産分与後に仮登記を入れておくという手法も考えられますが、やはり面倒な手続を避けたいとことやマイナーな登記手続であることから、そこまでの対策を講じられる人は少ないのではないかと思います。