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株式の相続

オーナー兼社長(代表取締役)が亡くなった場合、代表取締役の職位およびそれに伴う取締役の地位は、一身専属権として相続対象外となります。従って、新しい社長を選出するためには、株主総会および取締役会での手続きや、取締役同士の互選によるプロセスが必要です。

準共有

代表取締役の職位は相続されませんが、代表取締役が所有していた株式は相続対象となります。すなわち、相続人は相続開始時点から被相続人の財産に関するすべての権利を継承し、相続人が複数いる場合は、それぞれの相続分に応じて相続財産を共有します。なお、株式などの所有権以外の共有については、「準共有」と呼ばれます。

(相続の一般的効力)
第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

(共同相続の効力)
第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

つまり、オーナー兼社長が所有している株式は、社長の死亡と同時に法定相続分の割合で相続人間で準共有となります。ところで、このケースでは、後任の社長を早急に決定する必要がありますが、遺産分割協議書の作成を後回しにしたいというご事情をお持ちの方もいるでしょう。

共有者による権利の行使

遺産分割協議書がなくても後任の社長を選定することはできます。とは言え、この場合であっても、相続人間での協力と合意が不可欠です。結局のところ、手間は同じなのですから、協議書という形にするのは後回しにするにしても、やはり遺産分割に関する協議はすべきという判断になるでしょう。

(株主の権利)
第105条 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権
2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。
(共有者による権利の行使)
第106条 株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

なお、判例によれば、権利行使者の指定に際しては、共同相続人の持分の価格に従いその過半数によって決定されます。また、当該権利行使者は共同相続人間の意思に拘束されず、自己の判断に基づいて権利を行使することになります。

株主名簿の名義変更

また、共有者の権利行使に関しては、株主名簿の名義書換の手続きが必要と考えられます。

(株主名簿)
第121条 株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号

(株式の譲渡の対抗要件)
第130条 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2 株券発行会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社その他の第三者」とあるのは、「株式会社」とする。

税法上の注意点

ところで、非上場の中小企業ではあまり想定されませんが、相続する株式が高額の場合は、事業承継税制を利用する可能性があります。この場合、遺産分割協議書が必要書類となりますので、相続開始の日の翌日から起算して8カ月を経過するまでに遺産分割協議書の作成を完了する必要があります。

まとめ

いずれにしても、株式の名簿書換の手続を踏まえれば、遺産分割協議によって、株券の帰属先を単独名義として明確にしておくべきでしょう。できれば社長がご存命のうちから事業承継に関する話し合いを進めておくべきです。

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