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事業承継と家族信託

事業承継を行う上で大事なことは、「株式を分散させない」ということです。

少数株主の存在は内部紛争を招く

株式が分散している状態というのは、少数株主が存在しているということです。少数株主が存在しているということは、それだけ内部紛争が起こりやすいということです。揉め事の種を抱えたままでは、事業承継が円滑に進むはずはありません。一般的に、どんな優良企業でも、少数株主がいる場合には、M&Aを成功させることは難しいと言われています。

少数株主対策

少数株主の対策には、金庫株種類株式の制度を利用したものがあります。

さらに、例えば、中小企業における自社株の親族内での承継の場合、家族信託を利用することもできます。家族信託を利用した事業承継によって解決できる問題には、次のようなものがあります。

① 会社経営者(大株主)の健康不安による経営リスクが怖い。

② 株価が高いため贈与税が気になって生前贈与できない。

③ 経営権を徐々に移管していきたい。

④ 会社資産の共有はさせたくないが、かといって遺留分相当額を払えるほど資産がない。

⑤ 確実にお目当ての者へ事業承継をしたい(その先の承継先も決めておきたい)。

家族信託は万能ではない

家族信託は、契約によって、信託当事者を拘束するものです。関係者の合意を目に見える形にすることが家族信託の最大の利点でしょう。柔軟に制度設計ができることは確かなのですが、それでも民法、信託法、銀行の実務などの制約は受けるので、万能というわけではありません

家族信託は、一定の財産を家族の誰かを信じて託すものです。例えば、身上監護(身の回りの世話)といったことは、家族信託の射程外です。

信託できる財産にも制限があります。不動産、現金、未上場株といったものは、家族信託に馴染みやすいものですが、年金、生命保険、預貯金、農地などは、信託財産として取り扱うことはできません。

また、公正証書によって信託契約をしたとしても、銀行によっては、信託口口座に対応していないところもあるので、事前の確認等が必要になります。