相続登記の申請が義務化されました YouTube

新しい生前対策のルール

令和6年1月1日から「相続時精算課税制度」がスタートします。これにより、生前贈与が相続対策の手段となるかもしれません。

相続時積算課税制度

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。(国税庁のHPより引用)

新たなメリット

これまで、この制度を利用するためには、上記のとおり、「一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要」があったのですが、令和5年度の税制改正により、令和6年1月1日以降にこの制度を利用する場合は、年間110万円までの贈与については、贈与税の申告が不要になります

贈与税と相続税の改正の内容の詳細は、こちらをご確認ください。→令和5年度税制改正

相続時積算課税制度を利用した場合は、最大2500万円までの贈与が非課税となることに加え、少額であっても必要だった面倒な申告手続がなくなったことで、大きな注目を集めているのです。贈与の対象は、金銭以外にも、不動産や株式等もOKで、特段の制限はありません。

注意点

注意点としては、不動産を贈与した場合は、贈与税以外にも「不動産取得税」がかかるのですが、相続時積算課税制度を使っても、こちらの節税にはならないということです。また、登記の際に支払う登録免許税は、相続税が1000分の4であるのに対し、贈与税は1000分の20となり、実に5倍も高額です。弊所の報酬額の数倍も税金がかかってしまうことがほとんどです。このほか、暦年贈与との併用ができないことにも留意する必要があるでしょう。

これに対し、暦年贈与(年間1人当たり110万円までの控除)の方は、相続人への贈与財産への足し戻しの期間が、従来の「3年」から「7年」になりました。来年からは、非課税を見込んで贈与したもののうち、亡くなった7年前の分は、キャンセルされてしまい、相続財産に足し戻して計算されることになります(ただし、孫への贈与はこれまでどおりです)。

一方で、生前贈与には、金銭面の損得だけでは測れないメリットもあります。司法書士・行政書士としては、こちらの観点に着目したいです。

例えば、遺産分割協議で揉めることが想定される場合には、生前贈与は非常に有効です。当事者間の合意の下に、契約によって、確実に財産を承継することができるからです。相続時に遺産分割で何年も協議をしなければならないケースや、ひいては紛争に発展しまったケースと比較すると、単純に税金の多寡だけで判断すべきではないと考えます。

遺言との違い

相続のトラブル回避方法としては、遺言による方法もあります。しかしながら、遺言の場合は相手方の意思は関係なく、遺言を残した後のことを確認する術はありません。また、遺言書の作成には契約書よりも形式的な制約が多く、費用面でも遺言書を作るよりも贈与契約書を作成した方が、たいていは安価です。

弊所の代表の友人のお父様は、生前にすべての財産を売却・整理して、遺留分等にも配慮し、息子兄弟にすべて分配してしまわれたそうです(居宅も売却して御自身は施設で余生を過ごされたとのこと)。

契約には判断能力が必要

なお、贈与は、相続のように当然に死亡と同時に法律効果が発生するものではなく、契約によって、効果が発生します。したがって、贈与者と受贈者双方の合意が必要不可欠です。当然ですが、認知症等によって判断能力が失われた場合は、法律行為ができなくなりますので、ご注意ください。

この記事を書いた人

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