相続登記の申請が義務化されました YouTube

相続に関わる士業

相続に関わる士業はいくつかあります。

相続手続については、いずれかの士業の独占業務とはなっていません。ないため、どの士業にお願いすべきかわからないという意見を聞きます。相続登記の義務化も控えて、それぞれの士業が自らの優位性を主張しているようです。

今回は、司法書士の立場で、できるだけポジショントークを抑えて、解説したいと思います。

相続手続に関わる士業としては、司法書士のほか、弁護士、税理士そして行政書士があります。

司法書士

司法書士の優位性は、なんといっても、相続登記(所有権移転などの不動産の名義変更)です。上記に挙げた士業のうち、登記に対応できる士業は、司法書士と弁護士しかありません。

しかしながら、弁護士は、法律上司法書士の業務を行うことができるとされているだけです。不動産登記法は、司法試験の試験科目に入っていません。当然に実務経験があるということもありません。したがって、実務上は、弁護士が受任をしても、司法書士に委ねるケースが多いでしょう。

なお、登記に関連して、ちょっとした利点があります。

法定相続情報一覧図の写しという戸籍の束に代わる証明書は、相続に関する手続きを行う非常に便利です。この書類の取得は、法務局に対して行います。したがって、司法書士に登記の際に併せて取得してもらうことで、その後の銀行などとの手続がスムーズに進むということがあります。

弁護士

弁護士の優位性は、紛争案件への対応です。例えば、紛争性のある遺産分割協議書の作成については、弁護士の独占業務ですので、原則として、他の士業は手を出せません。

例外としては、簡易訴訟代理等業務の認定を受けた司法書士(いわゆる「認定司法書士」)に限っては、140万円以下の紛争解決に対応することができます。この場合の紛争案件への対応というのは、例えば相続人間で紛争がある場合は、相続人のいずれかの代理人として交渉に当たることを基本的には意味しますので、必ずしも中立公平な立場で遺産分割協議書を作成してもらえるというわけではありません。「調整役」としての業務は、相続人全員からの同意があれば、司法書士も対応することができると考えられています。

ここでひとつ注意事項があります。

遺産分割協議書の作成は、紛争性がなければ、いずれの士業も関与することはできます。が、相続登記の添付書類として使用する遺産分割協議書は、一定の形式的な要件がありますので、他の士業の作成したものでは申請ができない場合があります。ご注意ください。

税理士

税理士の優位性は、相続税の申告です。これも(税理士登録をした)弁護士が対応することはできますが、紛争性のない税務申告ということだれば、税理士に依頼するのが一般的でしょう。

お金のことは関心が高いので、司法書士に対しても質問が多い分野ですが、登記の際に必要となる登録免許税を除いては、一般的なお答えしかできません。

なお、相続税の申告については、基礎控除額というものがありますので、すべての方に必要な業務というわけではありません。相続税の申告だけでなく、相続財産である不動産の売却には、贈与税不動産取得税も発生し、様々な特例や控除などを考慮した具体的なシミュレーションは税理士でなければ対応が難しい業務です。

行政書士

行政書士の優位性は、自動車の名義変更です。許認可業務を専ら扱う行政書士の強みが発揮される分野です。

裁判所への申立て

優位性の判断が難しい事項としては、遺産分割調停などの裁判所への申立があります。代理申請ができるのは弁護士だけですが、司法書士は、裁判所提出書類の作成を担う専門職として設けられた経緯もあり、例えば、書類を作成して本人が申請するということであれば、司法書士も対応はできます。遺産分割調停の申立だけでなく、相続財産管理人、不在者財産管理人、相続放棄、遺言の検認などの他の申立も同様です。

その他の業務

そのほか、相続に関して発生する業務としては、①相続人の調査、②相続財産の調査がありますが、いずれの士業も関与することが可能です。基本的には、委任状をもらって、代理人として書類の収集等の手続を行う業務だからです。なお、例えば、登記の依頼に付随して行う業務であれば、戸籍謄本等の収集に関しては、司法書士の職務請求書というものが使えますので、委任状で対応するよりも円滑に手続きを進めることができます。他の士業も、自らの業務に関して行う限りにおいて、同様と思われます。

また、③預貯金の解約や払戻しや④株式の名義変更についても、いずれの士業も、(委任状をもらって)関与することができます。

実務上は、他の業務と併せて、依頼するかどうか判断される場合が多いのではないでしょうか。金融機関や証券会社を相手にする手続の方法は、金融機関等各社によって様々です。あらかじめが決まっている公的機関を相手にする手続きとは勝手が違うのです。ことから、士業によっては、個人的に扱っていない場合や逆にこれだけを専門分野にしてされている方もいるようです。

いかがでしたでしょうか。やはり少しポジショントークが入ってしまったかもしれません。そのへんは、適宜割り引いてご参考にしてください。

この記事を書いた人

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