相続登記の申請が義務化されました YouTube

相続させない方法

親が子供に虐待等をされているような場合、虐待を受けている親は、どのような対応ができるでしょうか。

推定相続人の廃除

この場合、推定相続人の廃除の手続きをすることによって、その子供に相続人の資格自体を失わせ、遺留分すら与えないようにすることができます。

(推定相続人の廃除)

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

廃除の方法

廃除の方法は、被相続人自身が生きているうちに、家庭裁判所に調停又は審判を申し立てるか、遺言に書いておくかになります。

なお、廃除の効果は、被相続人と被廃除者との間で相対的に生じるものなので、廃除された者の子供は代襲相続することは可能です。また、相続の廃除を事後に取り消すこともでき、廃除した後に遺産を相続させるような遺言を書くこともできます。

廃除が認められない場合

以上は法が用意している制度の説明ですが、遺留分という相続人の大事な権利を奪うものであることから、家庭裁判所の判断は実際には厳しくて、廃除が認められる確率は15%程度とも聞きます。判例を見る限り、次のようなケースでは、廃除が認められない傾向にあるようです。

① 虐待等の原因が被相続人にある場合

② 虐待等が継続的なものでなく一時的な場合

③ 虐待等が相続関係を破壊するほど重大なものと思われない場合

廃除以外の方法

廃除するほどではないが、あまり仲が良くない子供に遺産を残さない方法はないのでしょうか。

これについては、相続財産をなくしてしまう(あるいは限りなく少なくする)ことで、実現できると主張する人がいるようです。生前贈与や生命保険の活用によって、長期にかつ早期の段階で、特定の相続人に対して、財産を全てあげてしまえばよいというのです。

遺留分侵害請求

しかしながら、生前贈与も遺留分侵害請求の対象となります。特に、「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したとき」は、1年や10年の足し戻し期間の要件もなくなって、遺留分侵害請求の対象となりますので要注意です。相続財産の総体を減らすことで遺留分の規模を抑えるという効果は確かにありますが、遺留分に対する配慮が全く必要なくなるというわけではありません。

第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

遺留分を相続させない方法

こうしてみると、遺留分を相続させない方法は、(廃除が確実にできるような)よほどの事情がない限り、遺留分権利者が事前に納得をして遺留分の放棄をしてもらうか、限定的ではありますが、生前贈与等によって少しでも相続財産を減らすことしかないように思われます。もっとも、遺留分を侵害している遺言も無効ではありませんので、消滅時効の成立にかけてみるという手もないわけではありません。

確実な法はありませんが、生前対策には、様々な方法がありますので、うまく組み合わせて、ご自身の目的に沿った解決方法を考えていくのが良いと思います。

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