少数株主権とは、発行済株式総数又は議決権の一定割合を持っている株主の権利のことです。例えば、総株主の議決権の3%以上又は発行済株式総数の3%以上の株式を有すると、取締役等の解任請求権を持ちます。すべての株式が譲渡制限付きの譲渡制限会社では、株券の保有期間の要件(6カ月)もありません。
一株しか有していない株主にも権利がある
なお、1株しか持っていない株主でも(6カ月の保有要件あり)、取締役等に対する責任追及等の訴えの提起や違法行為差止請求権を行使することができます(少数株主権に対して単独株主権とも言います)。単独株主権には、株主総会や取締役会の議事録の閲覧請求権や議案提出権もあります。
経営陣が少数株主と対立関係になければ、なんの問題もありませんが、常にコントロールできる保証はありません。特に事業承継に際しては、内部紛争の種はできるだけ摘んでおきたいものです。
少数株主に対する対策
そこでまず最初に思いつくのは、少数株主の株を、会社が買い取ってしまうということです(自己株式の取得)。しかしながら、この場合は、株主平等原則の要請から、他の株主が追加で売り渡しを請求する権利も認める必要があります。
これを防ぐためには、定款に売渡請求権を認めない等の工夫をすることが必要です。このほか、株式の譲渡の際の買取人をあらかじめ会社に指定したり、相続等の際の会社の売渡請求権を定款に定めておくこともできます。
種類株式
また、議決権行使条項付株式や拒否権条項付株式(黄金株)などの種類株式を利用することが考えられます。ちなみに、種類株式は、非常に面白い経営戦略上のツールである反面、様々な論点を派生させ、多くの受験生や実務家を悩ませる存在でもあります。
取締役会
このほか、取締役会を設けることによって、経営の重要事項を、株主総会ではなく、取締役会で決定するように機関設計を変えることも有効です。これにより、単独株主の議題提案権等の権利を抑制することができます。
監査役
さらに株主総会の権限を抑制する対策としては、監査役を設けることも考えられます。監査役がいない会社では、株主総会が監査の機能を担いますので、これを監査役の機能に移すわけです。
株式併合
最後に少数株主を追い出す方法として、株式併合があります。いわゆるスクイーズアウトとかキャッシュアウトと呼ばれている手法です。株式併合とは、例えば100株を1株などにすることですが、それによって1株未満となる「端株」しか有しなくなった株主に対して、端株分の対価を交付して株式を取り上げてしまうのです。
他にも、特別支配株主の株式売渡請求や全部取得条項付種類株式を利用することも、制度上はあり得るのですが、実務上は、株式の併合が最も使いやすいのではないかと思います。
*少数株主権は、株主側からすれば、正当な権利なのですが、職業柄、経営者の視点での記載になっております。