相続登記の申請が義務化されました YouTube

相続分の譲渡

相続放棄と似て非なるものとして、「相続分の譲渡」というものがあります。

ややこしい相続

相続分の譲渡は、主に、例えば、相続人が多い場合や相続争いが起きているといった、ややこしい相続に関わりたくない場合に使われます。

例えば、被相続人Aの相続登記が長年にわたって放置されており、その前妻のBや後妻のCも既に他界しており、面識のない子どもや孫たちで遺産分割協議を行わなくてはいけない場合であって、しかもお互いが対立関係にあるような場合などにおいて、相続分の譲渡をすることによって、当事者から離脱するのです。

相続分譲渡証明書

相続分の譲渡をする場合、相続分譲渡証明書の作成が必要(契約自体は口頭でも有効ですが、トラブル防止や登記を予定している場合は作成すべきです。)になりますが、遺産分割協議をする相続人の数が減ることにになりますので、相続手続の簡略化が図ることができます。

取戻権

一方で、相続分の譲渡の相手は、内縁の配偶者などの本来は相続する権利がない第三者(法人も可)でもよいとされています。こちらは、かえって相続手続が面倒になることにるかもしれませんので、民法は、「取戻権」に関する規定を設けています。

(相続分の取戻権)
第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

包括的承継

相続分の譲渡は、相続分の譲渡契約を締結することで、積極財産や消極財産の区別なく相続する権利すべてを包括して承継させます。ただし、債務については、債権者の承諾がなければ、譲渡人と譲受人が連帯して負うことになります。また、包括的承継なので、財産の一部の持分割合だけ承継させるということはできません。譲渡は、有償でも無償でも構いません。

相続登記の手続き

相続分の譲渡があった場合の相続登記の手続きは、譲受人が相続人か相続人以外かによって、大きく違ってきます。

相続人に譲渡した場合:例えば、共同相続人A、B、Cがいる場合、BとCがAに対して相続分の譲渡をした後、Aは、単独で、相続を原因とする所有権移転登記の手続きをすることができます。※他の方法もあり。

相続人以外の第三者に対し譲渡した場合:まず、共同相続人名義への相続登記をしてから、相続分の譲渡(相続分の売買又は相続分の贈与)による所有権移転登記をしなければなりません。相続人でない者に対しては、相続登記ができないからです。

これに加えて、遺産分割協議、数次相続、代襲相続等が絡んだりすることによって、登記手続きが、複雑になっていく可能性があります。

この記事を書いた人

MKリーガルは、相続と商業登記を主に取り扱っている司法書士事務所です。お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。お問い合わせフォームにより、24時間365日受け付けています。

目次