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書面決議(みなし決議)

書面決議は手続きの簡素化にはならないというお話をします。

書面決議を利用する場合

取締役会や株主総会について、役員が一堂に会するのが難しい場合、書面決議の利用が考えられます。書面決議は、会議は開催せずに、開催したものと「みなす」ための制度です。

例えば、取締役が海外にいたり、取締役の人数が多かったり、頻繁に取締役会を開催するような会社では、取締役が実際に集まることが難しいことがあります。特に、上場会社の100%子会社では、親会社の役員が子会社の役員を兼務していることが多く、多忙で出席が困難です。加えて、最近では、コロナ対策のためできるだけ集まりたくないといった事情もあります。

こうした場合に、書面上(メール等の電磁的記録によるものも含まれます。)で、役員の意思を確認したことを条件として、会議の開催があったものと「みなす」のです。

ところで、書面決議は一見すると手続きの簡素化を図るためのツールに使えそうです。なにしろ会議を開催しないでいいわけです。ところが、後述しますが、実務上は、かえって労力が増えることもあるのです。

取締役会の書面決議を行うための条件

まず、取締役会の書面決議について、見てみましょう。

必要な条件は、以下のとおりです。

① 定款の規定が必要

② 取締役の提案書を作成して全取締役に送付することが必要

③ 送付を受けた全取締役が提案に同意することが必要

④ 取締役会議事録の作成が必要

このように、書面決議では、手続きの簡素化どころか、作成すべき書面や意思決定のための手続きが増えます。また、決議条件についても、全員の同意が必要となりますので、反対者が想定される場合やじっくりと議論したい場合は、利用が難しくなります。

株主総会の書面決議についても、①の要件が不要なだけで、やはり同様の制約があります。

このように、書面決議は、必ずしも事務手続きの短縮化が期待できるものではありません。この点には、十分留意しておくべきです。

参考:

(株主総会の決議の省略)

会社法第319条1項

 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

(取締役会の決議の省略)

会社法第370条

 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

取締役会非設置会社の場合

なお、取締役会を設置しない会社の場合、取締役の過半数の一致による決議をすることがあります。この場合、法的には、一同に会する義務はありません。しかしながら、登記手続の実務上は、「取締役の過半数の一致を証する書面」として、「決定書」を作成し、所要の記名押印を求めることになります。

リモート会議について

書面会議と似て非なるものとして、Web等を使ったリモート会議による決議があります。コロナ対策として、利用する会社も多くなってきているようです。こちらは、リアルとバーチャルが混在している会議の形式ですが、会議はちゃんと開催するので、通常方式ということになります。

この場合、出席者のうちの一部の者がリモートで参加をした旨を議事録で明記して必要があります。議事録の形式上の話ですから、事務手続上の負担が極端に増えるというわけではありません。ただし、全ての出席者についてWeb等での参加とする「完全バーチャル会議」については、形式的には認められていないと考えられますので、例えば、少なくとも議長(代表取締役)だけは開催場所に出席したものとして議事録等を作成する必要があります。

押印の問題

リモート会議には、取締役の押印に関する問題もあります。取締役が一堂に会して会議を行うことができないことから、押印作業について、通常よりも時間がかかることが想定されます。一方で、登記事由が生じてから2週間以内に登記を申請しないと登記懈怠による過料が発生する可能性があるので、しかるべき期日までに役員の押印をいただけるようスケジュール管理が必要になります。

ここで電子署名を提案したいところですが、そのためには、まず電子署名ができるように環境を事前に整えておく必要があります。また、当該環境があったとしても、代表取締役を選定する取締役会議での電子署名は法務局発行の証明書に限られますので、要注意です。

まとめ

以上を踏まえると、手続きの簡素化という観点だけで、書面決議等を活用することは避けるべきです。また、Web等を活用したリモート会議を利用する際には、取締役の押印に要する日程にも十分留意する必要があります。会議の開催が難しい場合には、書面決議やリモート会議の場合の株主総会及び取締役会の手続要件を事前に確認し、対応することが必要になります。

この記事を書いた人

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