相続登記の申請が義務化されました YouTube

登記懈怠

懈怠」(けたい)は、法律用語としては、「一定の義務を怠ること」を意味します。つまり、登記懈怠とは、「やるべき登記をやっていない」ということです。では、そもそも登記は、義務なのでしょうか。登記を怠っていると、何か罰則があるのでしょうか。

商業登記にまずはご注意を!

登記懈怠がよく問題になるのは、商業・法人登記です。

商業・法人登記の場合、会社法等で、登記の義務が明記されており、役員の交代などの登記の事由が発生してから、2週間以内に登記を申請しないと、100万円以下の過料が課せられます。

後述しますが、不動産登記に比べて、かなり厳しい義務となっています。不動産という個人の財産に関するものは、原則として私的自治に委ねるのが適当であるのに対して、商業・法人登記については、「取引の安全」という公的な要請が高いということなのでしょう。

登記された会社の情報は、法務局に閲覧請求をすれば、誰でも閲覧できます。この登記の制度があるおかげで、取引をする相手方が信用できる会社かどうか判断することができます。公開されるべき登記情報に嘘偽りがあるようであれば、取引の安全が保証されません。面倒でお金のかかる手続のためのコストをきちんと払えるからこそ、信用力のある取引先として認められるのだともいえましょう。

よほど酷い場合でないと課されないそうですが

ところで、登記の懈怠がある場合に、必ず過料が課せられるのかというとそうでもないようです。登記懈怠を発見した登記官は、裁判所に連絡をする必要があり、最終的には、裁判所が、過料の額も含めて、過料に処するかどうかの判断をします。法律上は、「100万円以下の~」となっていますが、実際には、3万円~10万円ということが多いようです。

「過料」は、行政罰なので、罰金や過料とは異なり、前科が付くような刑罰ではありませんが、制裁として金銭を徴収されることには違いはありません。何よりも、「裁判所」から「会社法違反事件」のため「過料に処する」というようなことが書かれた文書が、「代表者個人宛」で届くので、びっくりすると思います。そのようなことのないよう、MKリーガルでは、登記懈怠について、お客様に注意喚起をするよう心掛けております。

不動産登記の場合

不動産の登記には、「表示の登記」と「権利の登記」があります。「表示の登記」は、土地家屋調査士さんの所掌であり、不動産の所在、地目、地積等の物理的な状況を表示するために義務となっています。新しく建物を建てたり、土地を分筆したり合筆したりして、不動産の物理的状況に変化が生じた場合は、その事由が生じた日から1か月以内に登記を申請しなければなりません。そして、これを怠った場合には、「10万円以下の過料に処する」となっています。

権利の登記は基本は自由

一方、「権利の登記には、法律上の登記義務はありません。

権利の登記は、甲区と乙区に分かれます。甲区には所有権の権利が、乙区には担保権等の所有権以外の権利が記されますが、いずれも義務ではありません。「個人の自由」ということです。

しかし、実際には、権利の登記をしないと様々な問題が生じるため、登記をせざるを得ません。仮に、登記をせずに放置をしておいて、登記をしている第三者が現れた場合には、自己の権利を主張できなくなるリスクが生じます。このようなことから、未登記の不動産は、売買や賃貸物件として有効活用することはできないでしょうし、特に自宅を購入した場合は、権利の登記がなければ、銀行は住宅ローンを組んでくれないでしょう。

ただし、相続登記は義務化になる

一方、相続によって権利の変動が起きた場合は、すぐに売らなければならないといったような差し迫った事情があるわけでもないため、登記が放置され、大きな社会的な弊害となってきました。このような社会的な問題を背景を踏まえ、いよいよ、2024年4月1日から、相続登記義務化されます。

改正法によれば、相続登記については、原則として、相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限ります)で不動産を取得した者が、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、所有権を取得したことを知った日から3年以内に、登記をしなければなりません。そして、表示登記と同じように、(正当な理由なく)これを怠った場合は、10万円以下の過料に処せられます。

施行前の相続も対象になる

注意すべきなのは、2024年4月1日の前に相続が発生した不動産についても、対象となるということです。法律は、施行前に遡っては適用されないのが、原則ですから、ここは大事なところです。

なお、仏教用語で、懈怠とは、「善行を修めるのに積極的でない、悪を進んで行う心の状態」であり、「精進(しょうじん)が足りない状態」です。かなり厳しい意味が、語源となっているようです。

この記事を書いた人

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