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法律系資格試験

法律系資格試験(国家資格)として代表的なものは以下のものです。

行政書士試験

司法書士試験

司法試験

試験科目が被るものもありますが、それぞれ求められている能力が異なります。

これらの国家資格の試験科目を知ることは、有益です。その対象は、受験を考えている人だけというわけではありません。どの専門家に仕事を依頼しようと悩んでいる方にとっても、有益でないかと思います。

なお、筆者は、行政書士と司法書士の資格はありますが、司法試験は受験したことがありません。具体的には、司法試験については、受験勉強の延長と興味本位で、いくつかのテキストや問題集を読んだ程度です。したがって、これらを踏まえて、以下の解説をご覧ください。

行政書士試験

行政書士試験には、法令科目一般知識があります。

問題数と配点は、46問(244点)と14問(56点)です。8割以上が法令科目ということになります。当然、勉強の中心は法令科目になります。

法令科目は、基礎法学憲法行政法民法及び会社法です。

問題数と配点は、以下のとおりです、

5肢択一式:基礎法学が2問(8点)、憲法が5問(20点)、行政法が19問(76点)、民法が9問(36点)、会社法が5問(20点)です。

多肢選択式:憲法が1問(8点)と行政法が2問(16点)

記述式:行政法が1問(20点)と民法が2問(40点)

一般知識は、政治・経済・社会情報通信・個人情報保護文章理解です。

なお、記述式は、事例問題ですが、論文式ではありません。条文や判例知識について、40字以内で答えるものです。

民法と行政法がカギ

上記の配点からわかるように、行政法を重視している試験です。

勉強の順番としては、憲法→行政法、民法→商法でやりました。基礎法学とか一般知識は、隙間時間にやった程度ですが、その程度でいいと思います。

独学で、受験回数は1回です。テキスト、肢別問題集、記述用の問題集をそれぞれ1冊に絞って、テキストはさらっと読んで、すぐ問題集に取りかかりました。基本的には、肢別の問題集をぐるぐる回していたように思います。

行政法の配点が多いのですが、苦しかったのは民法だったと記憶しています。

まず、総則の山があり、そこを超えると、債権、物権、親族・相続と山が続くのですが、とにかく民法は量があるので、早めに一周させて、苦手意識を持たないようになることが大事だと思います。

なお、以下に当てはまる者は、無試験で行政書士になることができます(登録は必要)。

弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格のいずれかを取得している人

17年間(中卒の場合は20年間)公務員として勤務していた人

弁理士とかは入っているのに、試験科目がこれだけ被る司法書士が入っていないのが不思議ですね。実務の世界でもあまり仲が良くないように感じます。

司法書士試験

司法書士試験には、択一式記述式があります。択一式試験は、午前と午後でそれぞれ35問づつ(午後は記述も)出題されます。試験科目は、以下のとおりです。

午前の部(択一式):憲法(3問)、民法(20問)、刑法(3問)、会社法(9問)

午後の部(択一式):民事訴訟法(5問)、民事執行法(1問)、民事保全法(1問)、司法書士法(1問)、供託法(3問)、不動産登記法(16問)、商業登記法(8問)

午後の部(記述式):不動産登記法(1問)、商業登記法(1問)

上記のとおり、試験科目が多く、実務色の強い試験になっています。登記、裁判所提出書類の作成、供託、司法書士法(倫理等)と、あまり馴染みのない実務科目を勉強する必要があります。

実体法については、刑法が加わり、民法と会社法については、非常に細かい知識が問われます。行政書士試験と重なる科目でも、最初は解けない問題だらけでした。登記等の手続に必要な実体法の知識を問うているためであり、当然手続法についても、先例などの覚えるしかない細かい知識が問われます。

記述式は、実務と同様に、具体的な事例に即して申請書を作成させるもので、1問の中に数問の事例が入っています。論文式でないため馬鹿にする方もいるようですが、時間との制約もあって、なかなか難しいです。このため、短答式をできるだけ完璧にして、記述式の時間を確保するなどのテクニックも必要になります。

苦手科目は作らない

勉強の仕方としては、「民法→不動産登記法」、「会社法→商業登記法」、「マイナー科目)」の順番でやりました。

配点としては民法と不動産登記法が圧倒的なのですが、上位でないと合格できないので、1問しか出ないマイナー科目も含めて、どれかを捨てるということは結果としてなかったです。

苦しかった受験時代

最初は独学でしたが、試験を受けてみて、これは独学では無理だと感じました。基準点付近までは行けていたこともあり、予備校の中上級クラスに1年だけ通いました。予備校を経て受けた試験は5点足らず敗退。さすがに次は何とかなるだろうと思ったら、仕事等と兼ね合いでペースを崩し、結局4回も受験をすることになってしまいました。受からない理由がわからず、メンタル面も含めてとにかく苦しかったです。

行政書士試験の後であれば、登記法になじめるかが鍵になると思いますが、初学者であれば、山の高さに途方に暮れることになるかもしれません。テキストと過去問を並べてみるだけでもびっくりしますが、だいたいのテキストがまとめ本であることを知ったときは衝撃的でした。

完璧を目指さないとダメ

だいたいの試験は7割位できればいいと思って勉強してますが、この試験に関しては、完璧を目指さないと駄目な感じのプレッシャーがあり、毎回本番でもすごく気が張っていました。

過去問がベースにはなると思いますが、なにしろ範囲が膨大で、求められる知識も細かいので、自分にあったテキストや先生を見つけて、とにかく1週することを目指すのがいいと思います。

ただ、予定よりもかなり受験生活が長くなってしまい、今振り返っても、どの勉強方法が良かった、悪かったと偉そうに紹介できるものがありません。運任せのところもあり、あきらめずに頑張るしかないとしか言えません。

実務的にも暗記量がものすごく多い

当時は、こんなにたくさんのことを覚えさせる意味があるのかとぼやくこともありましたが、司法書士の実務は、マイナーな事例も含めて正確に早く登記することが求められるものであり、裁判所に関係する書類作成や訴訟業務も担うため、よくできた試験だと感じます。当時のテキストを今でも参照することがあります。

合格の目安は、上記の試験科目のすべてが一体として感じられるようになることだと言われています。

司法試験

司法試験には、短答式論文式があります。

短答式は、憲法民法刑法の3科目だけです。

問題数と配点は、以下のとおりです。

短答式

憲法(20問~25問)の50点

民法(30問~38問)の75点

刑法(20問~25問)の50点

論文式

公法系(憲法・行政法)の各100点

民事系(民法・商法・民事訴訟法)の各100点

刑事系(刑法・刑事訴訟法)の各100点

選択科目(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際公法、国際私法)

の100点

司法試験はとにかく論文が大事

上記のとおり、論文が重視された試験です。短答式は3科目しかなく、受験生のだいたい70%以上が合格しているそうです。勉強は論文中心です。行政書士と司法書士のダブルライセンスの方は、刑事訴訟法に選択科目を足せば手が届きそうですが、論文試験ですので、まったくの見当違いになるでしょう。

論文は、具体的な事例について、法的な論点を抽出し、条文を当てはめ、反論なども交えて、論理的に結論を導くというものです。勉強方法としては、論点に関するいくつかの型を覚えていくというのが標準的なやり方だと思います。

司法書士試験の合格後に特別研修で要件事実について学びますが、あのようなことを常に意識して勉強することになるのだろうと思います。

完璧を目指さなくてもいい

おもしろいと思ったのは、結論については、必ずしも判例に即してなくてもよいということです。論理がしっかりしていればいいのです。(自然に判例か通説に沿う方が良いことにはなるでしょうが)。短答も論文も、100点満点を目指すものではありません。訴える側、訴えられる側のどちらの立場でも、きちんと法律を駆使して弁論できる素養が重要ということなのでしょう。

試験を受けるまでにハードルもある

なお、司法試験を受けるためには、法科大学院を卒業するか予備試験に合格するかのいずれかのルートを通らなければなりません。合格率が30%~40%と高いのもそのためです。

また、合格後も1年にわたる「司法修習」を受ける必要があります。

訴訟実務に関しては、司法書士の特別研修は、約1か月ですから、比べるまでもありません。

まとめ

法律系の国家資格は、試験科目が被るものがあります。しかしながら、それぞれの職業の性格に応じた試験内容になっています。

この記事を書いた人

MKリーガルは、相続と商業登記を主に取り扱っている司法書士事務所です。お見積りは無料です。お気軽にお問い合わせください。お問い合わせフォームにより、24時間365日受け付けています。