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簡裁訴訟代理等関係業務

司法書士の認定考査の結果発表が、12月8日(水)にあり、無事合格しました。これで、訴額が140万円を超えない等の制限はありますが、簡易裁判所における訴訟等の代理業務を行うことができます。

司法書士は、弁護士さんと比較すると、紛争案件には立ち入らないのが原則なのですが、この簡裁訴訟代理業務に関しては、司法書士が他人間の法的紛争に介入(交渉・和解)し、紛争の当事者の一方の利益のために、働きます。

裁判所類作成関係業務とは違う

これと似た業務として、裁判書類作成関係業務というものがあります。これは、本人訴訟を支えるものとして位置づけられているもので、主体は本人としつつ、書類作成の面で支援をするというものです。司法書士は、明治5年以来、この裁判書類作成業務を通じて国民の権利保護に寄与してきました。

簡裁訴訟代理権は、平成14年の司法書士法の改正により付与されたものです。司法書士の新人研修では、先人たちの地道な長い努力の結果により獲得した大切な大切な権利だと繰り返し強調されました。(高額&自腹ですが)特別研修も設けるほどの力の入れようです。

その反面、当該業務に関与している司法書士は、決して多くありません。

司法書士が裁判業務に関与しないわけ

その理由としては、次の3つの「ない」が、挙げられます。

①争いごとに関わりたくない。

②儲からない。

③弁護士さんにはかなわない。

喧嘩は苦手

①について、司法書士は、あまり争い事が好きではない人が多いです。争い事を仕事にするということは、時には恨みを買うこともあるでしょう。弁護士さんの中には、訴訟の相手方に刺されて死んでしまった方もいるという話を聞いたこともあります。模擬裁判のようなゲーム感覚のうちはいいですが、実務では、相手方への悪口を延々と聞かされることもあるでしょうし、問題のある依頼人の弁護をすることもありそうですから、たいへんなお仕事だと思います(一方で、司法書士は、「平和産業」と言われ、売り手や買い手双方の代理人、あるいは相続人全員の代理人として、仕事をすることが多いです)。

そもそも弁護士がやらない

②について、140万円という制限がありますから、報酬額も当然その範囲でしかいただけません。したがって、弁護士さんのように、「着手金+成功報酬」で、大金が舞い込むということは、ほぼありません。そうすると、先の①の件とのバランスでも、割に合わない感が出てきますし、弁護士さんがペイしないから扱わない仕事のおこぼれをいただいているだけのような気もしてきます。積極的に訴訟業務を行うというモチベーションは上がらないのです。過払金返還請求事件のような、手続的要素が高く、報酬もよい仕事に注目が集まったのは、こうしたことも背景にあるのはないでしょうか。

弁護士よりもハンディがある

③について、簡裁訴訟代理ですから、簡易裁判所に関わるものしかできません。140万円という訴額の制限もあります。地方裁判所に移管されたら、司法書士は手を引くしかありません(裁判書類作成業務はできますが)。

また、司法書士は、少額訴訟以外は執行代理ができません。裁判には関与できても、その結果の実現には関与できないのです。

なによりも、弁護士に比べて、裁判業務に関する勉強時間が違います。司法試験は、与えられた事件について、法的な論点を自ら見つけ出して、それを法的三段論法に沿って、いかに処理すべきかを論じる試験です。学部とロースクールの勉強そして受験勉強を通じて、みっちり叩き込みます。合格後の研修時間も1年間と、司法書士の100時間とでは、雲泥の差です(一方で、司法書士試験では、登記手続に関する知識は当然として、会社法や相続等の分野において、非常に細かいところまで、インプットすることを強いられます)。

こうした裁判業務に関する「能力的な格差」(「職業的性格の違い」と言った方が正確かもしれません)に加えて、制度上も手かせ足かせがあるわけですから、相手方が弁護士をたてないような形式的な案件のほかは、よほど筋がいい案件しか司法書士がやってもなあと敬遠してしまうのもわかります。

ビジネスにならない

先輩方に聞くと、だいたい上記のような理由を述べられることが多いのですが、研修などの表の場では、このような認識を聞くことはあまりありません。どうしても、「先人たちの努力を無駄にしないように、個々人がもっと努力研鑽をして訴訟能力を磨きましょう、創意工夫でなんとでもなります」といったような論調になってしまいます。ビジネスとして、どう成り立たせているのか、そのへんの成功事例やノウハウも知りたいものです。

この記事を書いた人

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