登記の世界に「再任の登記」というのはありません。
重任の登記
再任というのは、任期満了等で退任する取締役を再び選任することですが、実は、登記原因で「再任」という用語は使用しません。つまり「再任登記」というのは、厳密には存在しません。任期満了の取締役を引き続き取締役として選任する場合には、「重任(じゅうにん)の登記」をします。
手続きとして一般的なのは、任期が切れる前に、株主総会を開催して、あらかじめ再任することを決定し(これを「予選」といいます。)、「年月日重任」という形式で登記を申請します。「重任」は、退任と就任が一緒になったようなものですが、退任登記や就任登記のいずれの登記も申請することなく、「重任」という形だけで申請するので、効率的です。
任期途中での再任
このように、任期が切れる直前に手続きを行うことによって「重任」で申請できるのですが、では、任期の途中に再任することや、任期が切れてしばらく経ってから再任する場合はどうでしょうか。
任期の途中に再任するということは、任期がまだ残っているのに、退任させて就任させることになるので、あまり実益はないように思えますが、この場合、重任の登記は申請できませんので、原則通り、退任登記と就任登記をすることになります。どうしても重任登記をしたい場合には、定款を変更して、任期を短くするしかありません。
選任懈怠
任期が切れて退任した取締役を、一定時間を空けて再任するこは、場合によっては、選任懈怠になるかもしれませんので、わざわざ行うべきではないでしょう。この場合も、やはり重任には当たりませんので、退任と就任の登記を入れることになります。
以上のように、任期満了の役員変更において、前任者を引き続き選任する場合は、重任登記をすることが一般的であり、そのためには、事前に予選をしておく必要があります。