組織変更とは、一般的には、合同会社等の持分会社が株式会社になることを指します。
株式会社から持分会社になるという逆のパターンも制度的にはあり得ますが、実務例としては、かなり少ないのではないかと思われます。
合同会社から株式会社へ
以下は、実例として多いと思われる合同会社から株式会社になるケースについて、お話をします。
株式会社になるメリットは、何と言ってもその信用力です。信用力を背景に事業資金を調達するというわけです。
したがって、元から知名度がある某外資系会社の日本法人等は、改めて株式会社になる必要はないでしょう。こじんまりと始めた会社が軌道に乗り出し、金融機関や顧問税理士に薦められたというようなケースが多いようです。
登記が必要
組織変更をするためには、登記手続きが必要です。ざっくりと言って、元の合同会社を解散して、新しい株式会社を設立する登記を同時にします。新会社において、商号や目的を変更する場合は、併せてやっておきます。
「解散+新設」との違いは、事業主体として連続性を持っていいるということです。このため、手続き上も、①登録免許税の特例がある、②公証人の定款認証がいらない等のメリットがあります。
債権者保護手続
一方で、組織変更は、最初から会社を設立する場合に比べて、気を付けるべき点が、いくつかあります。
まず、組織変更は、総社員の同意がないとできません。総社員の同意によって、組織変更計画書や株式会社の定款を作成します。
そして、組織変更をする上で、最も気を付けるべきことは、債権者保護手続が必要になるということです。
合同会社等の持分会社を構成する社員は、無限責任社員といって、債権者に対して無限の責任を負わなければならないことになっています。株式会社になると、これが有限責任社員となり、限られた範囲でしか、責任を負わなくなるのです。このため、債権者に異議の有無を確認をする機会を設けることが必要になるのです。
官報公告等の手続きが必要
具体的には、1カ月以上は、官報公告等によって、異議申立ての期間を設けなければなりません。登記を申請するための前提条件として、組織変更に異議をとなえる債権者がいないこと、又は異議をとなえる債権者がいたとしても必要な措置を講じたことを証明しなければなりません。このため、最初から株式会社を設立する場合よりは、時間を要することになるかもしれません。
同時申請できない事項など
また、本店移転の登記は、同時に申請することができませんので、別件で、あらかじめ本店移転の登記をしておくか、組織変更をしてから、本店移転の登記を別途入れるということになります。
そのほか、代表取締役の定め方についても、まだ株式会社が成立していない段階で、取締役会等を開催することはできませんから、定款の附則で定める等の工夫が必要です。
なお、組織変更の効力発生時期は、設立が登記完了時であるのに対し、組織変更は、組織変更計画に定められた日となります。もちろん、前述の債権者保護手続きがなされているという前提です。