代襲相続は、故人よりも先に亡くなった子などがいる場合、その相続人が誰かという問題の処理方法を指します。
代襲者等の相続権
民法877条第2項にあるように、「その者の子」が相続人となります。つまり、亡くなった人にとっては、孫が相続人になります。逆に言えば、子がいる場合には、孫は相続人になれません。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
配偶者の相続権
同時死亡の推定
交通事故等で親子が同時に死亡した場合は、死亡時刻が問題になります。同じ日であっても、子が先に亡くなれば、代襲相続が発生し、その子(孫)が相続権を引き継ぐことになります。死亡の前後がわからない場合でも、「同時死亡の推定」が働き、やはり代襲相続が発生します。
第六節 同時死亡の推定
第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
直系卑属でない者
上記の民法887条2項には、「ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。」との記載があります。「子だけれども直系卑属でない」というのは、養子縁組のケースで想定されます。例えば、ある方が、被相続人の子として養子縁組をしたとして、養子縁組の後に子が生まれたのであれば、その子と被相続人との間には、親族関係が生じますが(孫になる)、養子縁組をする前に、既に子がいたとしても、被相続人とその子の間には親族関係は生じません。つまり、親族関係が成立しているか否か(直系卑属かどうか)よって、代襲相続が発生するかが判断されることになります。
(縁組による親族関係の発生)
第七百二十七条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
再代襲
親(被相続人)が亡くなる前に、子が亡くなり、さらにその子もなくなっていた場合は、再代襲の問題になります(民法887条3項)。子であれば、何代にもわたって承継することが認められてますが、被相続人の兄弟姉妹が相続人になる場合であって、被相続人により先に亡くなっている場合には、一代限りの承継しか認められていません。
相続が長らく放置されていると、いろんなパターンの相続関係が発生し、相続人の特定に混乱してしまうことがあります。相続登記の義務化に伴い、こうしたことが少しでも整理されるとよいと思います。