本日より、「相続土地国庫帰属制度」が始まります。
相続した不要な土地を国が引き取ってくれる制度
法務省のお知らせにもあるように、「相続した不要な土地を国が引き取ってくれる」制度です。
問題は、この制度がニーズにあっているのかということですが、現時点では、「どうかなあ」という感想です(こう思ったのは、私だけではないはず)。
そもそもどうして創設された制度なのか
本制度がスタートすることになった背景にあるのは、
国としては、空き家問題に代表されるような所有者不明の土地の問題を少しでも予防し、解決したい。
そして、
相続人としては、利用価値のない「負動産」なんぞ、相続したくないし、ましてや面倒な手続とかはしたくない。
といったような事情です。
それなら、「いらない土地を国が引き受ければいいのでは」ということで、本制度ができることになりました。
この発想自体は、至極当然かと思います。
どんな条件で引き取ってもらえるのか(大前提)
しかしながら、もちろん、無条件で引き取ってくれるわけがありません。
要件があります。
最初に「相続した不要な土地を国が引き取ってくれる」制度と書いたように、大前提として、
①相続(又は相続人に対する遺贈)された、
②土地が対象となります(建物は不可、法の施行前の土地はOK)。
そして、相続等が大前提ですから、
③相続人全員で、すなわち共有相続であれば共有者全員で、申請しなければなりません(相続登記は不要)。
どんな条件で引き取ってもらえるのか(まとめ)
続いて、引き取ってもらえる条件を大まかにまとめると、以下の通りです。
※ 詳細は、法務省のパンフレットをご覧ください。
1.「面倒な土地」は、引き取ってもらえない
→ 例えば、①建物がある、②担保権や賃借権等の他人の権利がある、③権利関係や境界が不明・争いがある、④有害・危険、⑤管理処分に係るコストが高い等の「面倒な土地」は、引き取ってもらえません。最初の4つは、審査すらしてくれない「門前払い(不受理)」の要件です。
2.10年分の土地管理費相当額を支払わなければならない
→ 原則20万円として、土地の区分(宅地等)や土地の面積に応じて法務省が定める額を納める必要があります。
3.申請をして、審査をしてもらわなければならない
→ 審査手数料は1万4千円(一筆)で、審査期間は半年から1年です。実地調査もあるので、同行が求められることもあるようです。審査の結果、引き取ってもらえないという事態もあり得ます。
要は、「面倒でない土地なら、引き取ります」ということになったようです。国が管理処分をするということは、我々国民が負担をするということでもあるので、これはこれで致し方ないのことなのかもしれません。
私の感想
しかし、このような厳しい要件をクリアできるのなら、それらの土地の中に、「負動産」と呼べるものが果たしてどれくらいあるのかという疑問が湧いてきます。管理や処分が面倒でない土地であれば、何かしら別の方法が採れるのではないか、わざわざお金をかけて、時間のかかる申請手続をして、国に引き取っていただかなくても、民間の不動産業者に任せた方がいい解決策があるのではないか、また、相続登記(来年から義務化)しておいて様子を見るという選択肢もあるのではないかという気がいたします。
ということで、冒頭に書いたように、現時点では、「どうかなあ」という感想になりました。
申請の代行ができる士業
当該制度の申請を代行することができる士業としては、弁護士のほかに、司法書士と行政書士が定められています。弊所にも依頼が来るのか。願わくは、当職の所見が誤りとなり、所有者不明土地問題の解決につながるような結果になればよいと思います。
(※実は、ブログを書き終えてから、「引き取ること」が主眼なのではなく、「登記をさせること」が国の真の狙いなんじゃないかと思いました。だとすると、なかなかやりますね。)