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相続財産清算人

令和5年4月1日施行の民法改正によって、これまで「相続財産管理人」と呼ばれていたものは、相続財産清算人と名称変更されました。そして、ややこしいのですが、「相続財産管理人」という制度が新たに創設され、主として保存行為のみを行うこととされました。

※ 保存行為とは、「現状維持のための行為」のことです。 不動産の修理や修繕をしないと、不動産の価値や状態が損なわれるような場合は、「現状維持」のための「保存行為」が必要になります。これに対し、不動産を売買して現金化する等の現状変更を伴うものは、「変更(行為)」といったり、「処分(行為)といったりします

相続財産清算人とは

旧・相続財産管理人、つまり、「相続財産清算人」は、相続人の存在が不明な場合の相続財産の「清算」を行います。「清算」というのは、変更・処分を含むものであるということで、概念の整理を行い、相続財産清算人としたということです。

今回の改正では、名称変更だけでなく、手続きの迅速化も図られました(こちらが大事)。従来は3回の官報告示が必要でしたが、これが2回で済むようになりました。また、一部の手続きを平行して行うことで、最低でも13か月かかっていた手続きが、半年に短縮されました。

相続財産清算人が必要になる場合

では、この相続財産清算人は、どういう場合に必要になるのでしょうか。

例えば、不動産について、相続人の存在・不存在が不明である場合、不動産の処分ができなくなってしまいます。この場合、亡くなった方の債権者、内縁の妻等の被相続人と特別の縁故があった者などの利害関係人は、自らの権利を主張したくでも手続きができません。そこで、これらの利害関係人は、家庭裁判所に相続財産の清算人を選任してもらいます。利害関係人のほか検察官も、この申立てを行うことができます。

※ 相続人はいるけど、所在が分からない場合は、不在者財産管理人を選任してもらいます。

誰が相続財産清算人になるのか

相続財産清算人には、弁護士や司法書士等の専門家が選任される場合があります。相続財産清算人は、債権者、共有者、特別縁故者に対する相続財産の帰属の必要性について、段階的に手続きをして確認をします。それでも残るものは、最終的に国庫に帰属ということになります。

相続財産清算人の申立ては、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。その際、清算人の報酬や手続きの費用として、予納金が100万円ほどかかる場合があります。

こうした運用手続きは、改正前の相続財産管理人と同じです。

相続財産清算人の選任の手続き

改めて大まかな手続きの流れを示すと、以下のとおりです。

  1. 家庭裁判所に申し立て(審判まで2か月以内)
  2. 相続財産清算の審判→選任された旨、相続人捜索のための公告(公告期間:6か月以上)
  3. 相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告(②と同時で可、公告期間:2か月以上)
  4. 特別縁故者に対する財産分与の申立て(②の後、3か月以内に申立て)
  5. 必要に応じて、相続財産管理人が、家庭裁判所の許可・審判を経て、不動産や株等の相続財産を処分し、債権者等への支払い、特別縁故者への分与
  6. 不動産の共有者がいれば、帰属
  7. 残余財産の国庫帰属

相続放棄

なお、相続人の存在が不明であるケースとしては、相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含まれます。前回、相続財産の国庫帰属制度の話をしましたが、相続放棄をすることによって、いらない土地を国庫に帰属させることもできるわけです。

相続放棄の申述は、家庭裁判所に対し、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならない」とされています。

相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになるため、相続の権利は次順位の者に移ること、プラスの財産やマイナスの財産に関係なく一切の相続する権利がなくなります。

さらに、いらない土地を相続放棄をしても一定期間は相続財産の管理義務があることにも注意が必要です。

まとめ

まとめますと、以下のとおりです。
1.相続財産清算人は、相続人がいるかどうかわからない場合であって、相続財産の処分が必要な場合の制度です。
2.民法改正によって、従来の手続きが、簡素化・迅速化されました。
3.相続財産清算人は、利害関係人の申立てにより、家庭裁判所が選任します。

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