家族信託とよく比較されるものとしては、「成年後見」がありますが、こちらは、判断能力が低下又は喪失された場合の本人保護を目的としています。確かに使う時期・場面が重なるところもあるのですが、使用目的が異なるものだと考えた方がいいと思います。
親族と相談して決めるもの
家族信託のメリットは、元気なうちから、自分の財産の管理や承継の方法について、関係者を交えて話し合って、決められることだと考えます。
例えば、まだまだ自分は元気だけど、昔でいう「隠居」みたいな感じで、財産全部をすぐにあげるわけではないけれど、アパート経営などの財産管理は、家族の誰かに任せたいといった希望については、成年後見制度は使えません。
任意後見との違い
成年後見制度にも、自分の家族を後見人として決めておける「任意後見」というものがありますが、あくまでも判断能力が低下又は喪失した場合のことを事前に決めておくというもので、本人に判断能力があるうちは、効力は発生しません。
遺言との違い
また、争族対策として「遺言」も推奨されますが、遺言は一方的な意思表示なので、受け取る側の考えが配慮されておらず、結果として、本人が亡き後に争族になってしまうということもあり得ます。これに対し、遺産を残す側と残される側が、話し合いをして、納得いく形で、契約を締結するのが家族信託とも言えます。
財産管理等委任契約との違い
では、「財産管理等委任契約」はどうでしょうか。「自分の財産管理は、家族の誰々に委ねます。」と書いてハンコを押せばいいのではないでしょうか。
確かに委任者と受任者との関係ではそれでもいいと思いますが、契約者以外の第三者はどうでしょうか。家族信託は、信託法という法律に則って契約することに意味があります。その内容に応じて、公証証書の形をとる必要もありますし、不動産を信託する場合は、信託の登記が必要になります。こうした、法律上の枠にはめて契約するからこそ、不動産業者などの外部の関係者が安心して取引をできるのです。
家族信託は万能ではない
一方で、家族信託は、なんでもかんでも契約できるというものではありません。
身上監護と言われる身の回りのお世話を信託の内容とすることはできません。例えば、特にいわゆる「おひとり様」のように家族等の頼れる身内がいない方の場合は、診療所や施設への入所の手続きをお願いすることは、先に述べた委任契約や任意後見を活用することも一案でしょう。また、財産についても、信託できる財産には一定の制限がありますし、そもそも信託の対象としない財産をどうするかという問題もあります。信託に馴染まない財産の承継については、遺言書が有効な対策になります。
生前対策については様々制度が混在しているのが現状です。MKリーガルでは、色々ないろいろな制度の特徴を理解して、うまく自分の望みを叶えていくことが、生前対策において、大事だと考えています。