故人を若くして亡くされたような場合、未成年者との遺産分割協議をどのようにするかという問題が発生します。
未成年者は法律行為ができない
民法上、未成年者(18歳に達しない者)は、単独で有効な法律行為をすることができません。個別に未成年者の意思能力の有効性を判断することはは難しいので、民法は、未成年者等の行為能力を画一的に制限しているのです。
法定代理人の関与
このため、未成年者が法律行為を行う場合は、未成年者の法定代理人の関与が必要になります。
未成年者の法定代理人は、通常は、親権者です。親権者とは、通常は、父母になります。
利益相反行為
ところが、遺産分割協議においては、親権者と未成年者がともに利害関係を有する者として協議をすることになります。
親権者と未成年者と共に共同相続人であり、親権者が未成年者の代理人としても遺産分割協議を行う場合や、共同相続人でない親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議を行う場合は、「利益相反行為」に該当することとなり、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります(民法826・860条)。
このため、遺産分割協議が利益相反行為に当たる場合、こうした手続きを経ていいないと無効になってしまうので要注意です。
なお、利益相反行為に当たるかどうかは、紛争が現実化しているとか、親権者の意図がどうかということが問題とされるのでなく、こちらも外形上画一的に判断されるものとされています(最判昭42.4.24等)。
家庭裁判所への申立て
家庭裁判書に申立てをする際の添付書類については、未成年者・親権者・特別代理人候補者に関する書類のほか、利益相反行為を証する書面として、遺産分割協議書の案等が必要になります。
この遺産分割協議書の案については、「未成年者の法定相続分を確保すべき」という見解もあるところ、実務上は裁判所の判断において、個別の事情も勘案して、判断がなされるようです。
例えば、子供がまだ幼い場合等の事情がある場合には、母親が養育のために使用するということであるのなら、母親がすべて相続するということも認められるようです。
裁判所の判断基準が公表されているわけではないので、悩ましいところではありますが。