相続登記の申請が義務化されました YouTube

遺産承継業務

司法書士は、法令(司法書士法第29条、同施行規則第31条)により、他人の財産の管理若しくは処分を行う業務を行うことができます。

司法書士法施行規則31条

意外に思われるかもしれませんが、こうした業務を行うことができることが法令できちんと明記されている士業は、弁護士を除いては、司法書士だけです。

具体的には、司法書士法施行規則31条において次のとおり規定されています。これは弁護士法に基づく法務省令の書きぶりと一言一句変わりません。

  1. 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により,管財人,管理人その他これらに類する地位に就き,他人の事業の経営,他人の財産の管理若しくは処分を行う業務又はこれらの業務を行う者を代理し,若しくは補助する業務
  2. 当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱により,後見人,保佐人,補助人,監督委員その他これらに類する地位に就き,他人の法律行為について,代理,同意若しくは取消しを行う業務又はこれらの業務を行う者を監督する業務
  3. 司法書士又は司法書士法人の業務に関連する講演会の開催,出版物の刊行その他の教育及び普及の業務
  4. 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律 (平成十八年法律第五十一号)第33条の2第1項に規定する特定業務
  5. 法第3条第1項第1号から第5号まで及び前各号に掲げる業務に附帯し,又は密接に関連する業務

登記だけでない司法書士の業務

司法書士は、他人の財産管理のほかにも、会社経営などの企業法務事業承継に関与できます。

そのほか、相続財産管理人不在者財産管理人等への就職など、幅広い業務に関与することができます。

これらについては、法令上きちんと明記され、担保されているのです。

遺産承継業務とは何か

相続業務に関して、上記の法令の規定に照らせば、司法書士は、相続登記以外にも、以下のような手続業務ができます(他にもあります)。

これらは相続登記の業務とは区別して、遺産承継業務と呼ばれています。実務的には、遺産承継業務は、相続登記も含む包括的な遺産承継業務という位置づけになります。

① 預貯金の相続

② 貸金庫の開扉

③ 株式・投資信託の相続

④ 保険金請求

⑤ ゴルフ会員権の相続

⑥ 公共料金等の相続や解約

⑦ 遺言書の検認申立て 等

預貯金の凍結解除

一方で、相続に関して司法書士に直接依頼される業務は、圧倒的に不動産の相続登記のみの依頼が多いと思います。たまにこれに付随して預貯金の凍結解除や名義変更の依頼があるくらいです。

預貯金の引落しなどは、登記に比べてれば専門的な知識は必要とされず、既にリタイアをされている配偶者等の相続人であれば、時間的余裕があって対応できるといったこともあるのかもしれません。

そもそも司法書士は、不動産の名義変更しかできないと思われているようです。

このような認知の問題もあって、遺産承継のような包括的な相続業務は、主にブランド力のある信託銀行がを窓口となる場合が多いようです(遺産整理や遺言信託など)。

金融機関が行う遺産承継業務はかなり高価

各金融機関が遺産承継業務を行うことについては、上記のような法令上の制約があります。このため、実際には提携先の士業に再委任されることになります。必然的にエンドユーザーお客様のコストは上がります。

そこで、例えば、司法書士以外にも税金関係の試算や手続きを税理士事務所にまとめてお願いすることも考えられます。争いが想定されているようであれば、弁護士に相談するのも一案でしょう。

特に、時間をお金で買いたいと考える資産家にとっては、第三者に依頼するのが便利であり、お付き合いのある金融機関が窓口ということであれば安心感があると思われます。

なお、戸籍類の収集、家系図の作成、相続不動産の調査、遺産分割協議書の作成などは、相続登記だけを行う場合であっても、遺産承継業務として行う場合であっても、共通して発生する業務になります。

遺産承継業務のお値段は、不動産の名義変更だけの手続きよりは時間も労力を要するため、報酬額は上がりますが、それでも金融機関に依頼するよりは、かなりのコストダウンが図れます。

ぜひご検討ください。

この記事を書いた人

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